八ヶ岳へ行く。
清里、小淵沢、牧場、高原のカフェ、温泉。
もちろん、それも八ヶ岳です。
でも、黒猫高原が最初に案内したいのは、観光施設ではありません。
朝6時の八ヶ岳です。
まだ店は開いていない。
観光客もほとんど動き出していない。
聞こえるのは、鳥の声や風の音。
そして、少し冷たい高原の空気。
何かを見るためではなく、この時間の中にいるために八ヶ岳へ行く。
そんな旅があってもいいと思います。
夏の朝6時と、冬の朝6時はまったく違う
同じ八ヶ岳でも、季節が変われば朝は別物です。
夏。
昼間は観光客で賑わう場所でも、早朝ならまだ静かです。
日差しが強くなる前の空気には、高原らしい冷たさが残っています。
草には朝露。
森からは鳥の声。
天候によっては霧が流れ、いつもの景色がぼんやり消えていく。
これから一日が始まるという気配があります。
一方、冬。
こちらは「爽やかな高原の朝」という言葉だけでは足りません。
寒い。
場所や天候によっては道路が凍り、雪もある。
外へ出た瞬間に、空気そのものが違うと感じる朝があります。
そして何より、静かです。
夏の静けさが「一日が始まる前」だとすれば、
冬の静けさは、
高原そのものが眠っているような静けさ。
同じ朝6時でも、夏と冬ではまったく違う八ヶ岳があります。
高原の空気は、写真には写らない
八ヶ岳の写真を検索すれば、美しい景色はいくらでも出てきます。
山。
青空。
牧草地。
紅葉。
雪景色。
でも写真では、なかなか伝わらないものがあります。
空気です。
朝、外へ出た瞬間の冷たさ。
森の近くの湿った匂い。
霧の日の空気。
冬、鼻や頬に感じる冷気。
車から降りた瞬間、
「ああ、高原に来たな」
と思うことがあります。
絶景ではありません。
写真を撮っても、おそらく大した一枚にはならない。
でも、あとで思い出す。
黒猫高原が残したいのは、こういう八ヶ岳です。
静けさは「何もない」ことではない
静かな場所というと、
「何もない場所」
と思われることがあります。
私は逆だと思います。
人の声や車の音が減ると、それまで聞こえなかったものが出てきます。
風。
木の葉。
鳥。
遠くを走る車。
自分が歩く音。
冬なら、雪を踏む音まで妙に大きく感じることがあります。
つまり、
静けさとは、音がなくなることではなく、普段聞こえないものが聞こえてくること。
これも八ヶ岳の価値です。
だから朝6時に、有名な観光施設が開いている必要はありません。
むしろ開いていないからいい。
予定を減らすと、八ヶ岳が増える
旅行へ行くと、どうしても予定を詰め込みたくなります。
清里へ行く。
小淵沢へ行く。
人気店へ行く。
温泉へ行く。
せっかく来たのだから、できるだけ多く回りたい。
でも、一日に何ヶ所も回れば、当然移動時間が増えます。
時計を見る回数も増えます。
「次はどこへ行く?」
という会話も増える。
そこで黒猫高原では逆に考えます。
予定を一つ減らす。
空いた時間で、高原にいる。
少し歩く。
車を安全な場所に停めて休む。
温かい飲み物を飲む。
景色を見る。
何もしない。
予定を減らすほど、高原にいる時間は増える。
八ヶ岳では、それも贅沢です。
朝を見るために、前の日から八ヶ岳へ
朝6時の八ヶ岳を楽しもうと思うと、旅の作り方も変わります。
前日の夕方に八ヶ岳へ入る。
宿へ行く。
夕食を食べる。
夜になったら外へ出て空を見る。
星が見える日もある。
雲の日もある。
霧の夜もある。
そして眠る。
翌朝、少し早く起きる。
外へ出る。
冷たい高原の空気を吸う。
少し歩く。
そして宿へ戻って朝食。
これだけで、一泊二日の八ヶ岳旅行は成立します。
観光地を十ヶ所回らなくてもいい。
夕方から翌朝まで八ヶ岳にいる。
宿泊は、寝る場所を確保するだけではありません。
八ヶ岳で過ごせる時間を買うことでもあります。
星空の夜と、高原の朝
Stargazing Guideという名前なのに、なぜ最初の記事が朝6時なのか。
夜と朝を分けたくないからです。
夕暮れ。
夜。
月。
星。
深夜。
夜明け前。
そして朝。
全部つながっています。
満天の星を見ることができれば、それは素晴らしい。
でも、曇ることだってあります。
霧になる夜もあります。
星を見ることだけを目的にしていたら、
「今日は外れだった」
となってしまう。
でも夜の静けさを楽しみ、そのまま宿に泊まり、翌朝の高原まで楽しめたらどうでしょう。
星が見えなかった夜にも、旅は残ります。
黒猫高原と星空案内室が扱いたいのは、そんな一晩です。
冬の早朝だけは、無理をしない
そして冬については一つだけ。
静かだからといって、無理をしてはいけません。
八ヶ岳周辺では冬季に積雪や路面凍結が起こることがあります。
道路状況、天気、気温を確認する。
車なら冬用装備を整える。
暗いうちから知らない道へ無理に入らない。
安全に動ける範囲で楽しむ。
静けさを楽しむ旅だからこそ、急がない。
これも黒猫高原のルールにしたいと思います。
次の八ヶ岳では、朝の空気を一つ持ち帰る
次に八ヶ岳へ行ったら、
予定を一つ減らしてみてください。
そして可能なら、一泊する。
少し早く眠る。
翌朝、外へ出る。
夏なら、一日が始まる前の涼しい高原。
冬なら、音まで止まったような朝。
同じ八ヶ岳でも、季節によってまったく違います。
写真を何百枚撮らなくてもいい。
有名スポットを全部回らなくてもいい。
帰ってから、
「あの朝の空気、よかったな」
と思い出せたら、それでいい。
何もないように見える時間の中に、八ヶ岳があります。
何もない時間を、八ヶ岳へ。


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