黒猫高原時間 004
八ヶ岳へ行ったら、森を歩いてみる。
そう聞くと、どこかへ向かって歩くことを考えてしまいます。
何キロ歩くのか。
どんなコースなのか。
何分かかるのか。
展望台まで行けるのか。
けれど、50代、60代になってからの森林浴は、そんなに頑張らなくてもいいと思います。
森へ入る。
少し歩く。
気持ちのいい場所があったら止まる。
疲れる前に座る。
風の音を聞く。
鳥の声を聞く。
そして、何もしない。
歩くためではなく、休むために森へ行く。
そんな八ヶ岳の楽しみ方があってもいいと思います。
若い頃は、どこかまで行きたかった
若い頃に自然の中へ出かけると、目的地が必要でした。
山頂まで登る。
滝まで歩く。
展望台まで行く。
湖を一周する。
目的地へ着くことが、一つの達成感になります。
もちろん、それは今でも楽しい。
でも50代を過ぎると、必ずしも「どこまで行ったか」が旅の価値ではなくなってきます。
むしろ、
今日は無理をしない。
疲れる前に戻る。
気持ちのいいところだけ歩く。
そんな旅のほうが、翌日まで含めて楽しめることがあります。
最後まで歩かなかったからといって、森を半分しか楽しめなかったわけではありません。
ここは、大人の旅では意外と大切なことだと思います。
森林浴は、運動でなくてもいい
「森林浴」と検索すると、健康やウォーキングの話がたくさん出てきます。
もちろん歩くことは気持ちいい。
身体を動かすことも大切です。
でも、八ヶ岳まで来て森林浴をするなら、運動だけを目的にしなくてもいい。
木陰に入ったときの空気。
葉が揺れる音。
湿った土の匂い。
遠くから聞こえる鳥の声。
木々の間から入ってくる光。
こういうものを感じながら、ただゆっくりする。
それも立派な森林浴です。
森を攻略する必要はありません。
森の中に、自分の時間を置いてくる。
それくらいでいい。
まず10分、ゆっくり歩いてみる
最初から「今日は森林浴を2時間」と決めなくてもいいと思います。
森へ入ったら、まず10分くらいゆっくり歩く。
普段より少し遅く。
鳥の声がしたら止まる。
気になる木があったら見る。
風が吹いたら、少し立ち止まる。
そして、気持ちのいい場所があったら休む。
ベンチがあれば座る。
安全な場所なら、少し長くそこにいる。
何もしなくていい。
スマートフォンも、ずっと見なくていい。
森の中では、
「次に何をするか」を考えない時間
を作ってみる。
これだけでも、普段とはかなり違う時間になります。
50代からは、「疲れる前に休む」
若い頃なら、疲れてから休んでいたかもしれません。
あと少し。
もう少し先まで。
せっかく来たから。
そんな気持ちで歩く。
でも大人の森林浴では、逆でもいい。
疲れる前に休む。
まだ歩けるところで座る。
まだ行けるところで戻る。
そのくらいの余裕を残しておく。
八ヶ岳には明日も森があります。
一回ですべてを見る必要はありません。
「今日はここまで」
と決められることも、大人の旅の自由です。
一人なら、森の中で何もしない
一人で森へ行く良さは、誰にも説明しなくていいことです。
立ち止まってもいい。
戻ってもいい。
30分座っていてもいい。
「そろそろ行こう」
と言う人はいません。
普段の生活では、何もしない時間を作るのは意外と難しいものです。
仕事。
家のこと。
スマートフォン。
連絡。
ニュース。
何かが常に入ってきます。
でも森の中なら、何もしないことに理由がいりません。
何もしないために、森へ行く。
一人旅なら、そんな贅沢もできます。
二人なら、ずっと話さなくてもいい
夫婦二人で森へ行くのもいい。
ただ、大人の二人旅なら、ずっと会話を続けなくてもいいと思います。
並んで歩く。
鳥の声がしたら二人で止まる。
少し座る。
また歩く。
会話がなくても気まずくない。
同じ森の中にいる。
それだけの時間です。
観光地では、
「次はどこへ行く?」
「何時までに出る?」
という話が多くなります。
森の中では、その会話さえ少なくなる。
二人で何もしない時間を持てること。
それも、長く一緒にいる二人の旅の楽しさなのかもしれません。
森には、匂いがある
森へ入ると、景色だけではないことに気づきます。
木の匂い。
土の匂い。
草の匂い。
雨のあとなら、湿った森の匂い。
季節によっても違います。
写真には写りません。
動画にも完全には残りません。
でも旅から帰ったあと、ふと似た香りを嗅いだ瞬間に、その場所を思い出すことがあります。
「あの朝の森みたいだな」
そんな記憶です。
旅は、目だけで覚えているわけではありません。
耳でも覚える。
匂いでも覚える。
肌に感じた空気でも覚える。
八ヶ岳の森は、そのことを思い出させてくれます。
雨上がりの森も悪くない
晴れた日に森を歩くのは気持ちいい。
でも八ヶ岳は、いつも晴れているわけではありません。
雨の日もある。
霧の日もある。
朝起きたら、昨日まで見えていた山が何も見えないこともあります。
そんな日は「今日はハズレ」と思ってしまいがちです。
でも森林浴なら、雨上がりはむしろ面白い。
葉には水滴が残る。
土の匂いが強くなる。
霧が木々の間に入る。
遠くの景色が消える。
晴れた森とは別の場所になります。
景色が見えない日には、近くの森を見る。
それだけで旅の選択肢は増えます。
森を歩いたあとに、温泉へ
森林浴と温泉は相性がいい。
これは難しい話ではありません。
朝、森を少し歩く。
宿へ戻る。
温泉に入る。
あるいは昼間に森を歩いて、そのあと温泉へ向かう。
たくさん歩く必要はありません。
少し身体を動かしたあとに、温かい湯へ入る。
それだけで一日の流れができます。
森。
温泉。
食事。
静かな夜。
観光地を何ヶ所も回らなくても、一日はちゃんと旅になる。
50代、60代の八ヶ岳では、こういう組み合わせが面白いと思います。
朝なら、森のあとに珈琲を
もう一つおすすめしたいのが、朝です。
少し早く起きる。
森へ行く。
30分でもいい。
鳥の声を聞きながら歩く。
そして戻って、温かい珈琲を飲む。
朝食を食べる。
それだけです。
でも、普通に起きて朝食を食べた日とは少し違います。
珈琲を飲みながら、
「今朝の森、よかったな」
と思える。
旅の中に、もう一つ記憶が増えます。
豪華なアクティビティではありません。
予約もいらない。
少し早く起きるだけで、旅の時間が一つ増える。
八ヶ岳では、こういう時間を大切にしたいと思います。
星空の翌朝なら、さらにいい
前日の夜に星を見る。
夜の森は暗い。
木々はシルエットになる。
空を見上げる。
そして翌朝、同じ場所へ行ってみる。
今度は森が見える。
鳥が鳴いている。
木々の色が分かる。
夜には見えなかったものが見えてきます。
一つの場所なのに、時間が変わるだけで別の場所になる。
星空の翌朝までが、八ヶ岳です。
Stargazing Guideが星だけでなく、朝や森を案内したい理由もここにあります。
夜から朝へ。
星から鳥へ。
暗い森から朝の森林浴へ。
一泊すると、それらが全部つながります。
「何もしない」は、もったいなくない
せっかく八ヶ岳まで来たのだから、何かしなければもったいない。
そう思うことがあります。
でも、本当にそうでしょうか。
森の中で30分座っていた。
湖を眺めていた。
珈琲を飲んでいた。
昼寝をした。
星を待っていた。
そういう時間は、観光地を一つ回るより記憶に残ることがあります。
若い頃とは旅の楽しみ方が変わってもいい。
むしろ50代、60代だからこそ、
何もしない時間を楽しめる旅
が面白くなってくる。
八ヶ岳は、そのための場所にもなります。
歩くためではなく、休むために森へ。
次に八ヶ岳へ行ったら、予定の中に森林浴を一つ入れてみてください。
ただし、
「○キロ歩く」
とは決めなくていい。
森へ入る。
ゆっくり歩く。
鳥の声を聞く。
木の匂いを感じる。
疲れる前に座る。
そして、気持ちよくなったところで戻る。
それで十分です。
森林浴を、また一つの予定にして忙しくする必要はありません。
予定を減らすために、森へ行く。
そんな使い方があってもいい。
50代からの森林浴。
歩くためではなく、休むために森へ。
そして八ヶ岳で、
何もしない時間を一つ持ち帰る。
何もない時間を、八ヶ岳へ。
星空案内室
Stargazing Guide


コメント